西条:ソーラー熱暖房の家
太陽熱床暖房のある・子育て世代の敷地内二世帯住宅
西条市(旧東予市)の中心部から少し離れ、周辺は田畑に囲まれ遠景には石鎚山系も見える自然環境に恵まれたところに位置ている。赤ちゃんとご夫婦それに将来のお子様の計4人の子育て世代のご家族のために計画された住まいである。
敷地に初めて訪れた春の日。柔らかに陽の光はふりそそぎ、爽やかな風が流れ、北面には広々と視界が広がっていた。とても気持ちよかっ た…!その時、家中に風が流れ、明るく、視界を活かし一日の時間の移り変わり、季節の移ろいを感じることができる、気持ちいい、ほっとする住まいのイメージが浮かんだ。
ご実家とは敷地続きでもあり三世代が共に生活する場でもあるため、程よい距離感を保ちながらも、気軽にふれ合える場・空間づくりも考た。
その結果、平面的に出来るだけ細かに壁は設けず、建具の開閉で横の広がりを持たせる。同時に家族室上部に大きな吹き抜けをとり縦の空間のつながりを持たせた。仕上げは出来るだけ木材をそのまま見せ、壁や床も自然素材を中心に使用した。これらは生活により開放感と穏やかさを持たせた。家中に風が流れ、またどこにいても家族の気配を感じさせる。また太陽熱を利用した床暖房のあたたかな空気は吹き抜けを通して2階まで巡回し家全体を暖める。断熱性能も高め省エネで快適となるように工夫している。また仕事をお持ちの奥様の家事がしやすい動線、収納位置・方法にはこと更こだわった。
外部に大きなウッドデッキを設置することで親御さんとの緩やかなつながりの場をつくる。そこにはもともとあった桜をそのまま生かしている。花見が出来ることを願っている。
建築場所 :愛媛県西条市 / 新築 / 専用住宅
延べ床面積 :227.81㎡ ( 68.91坪 )
構造規模 :木造2階建て / 在来工法
仕様 :床・杉無垢板 壁・珪藻土塗 天井・紙張り 塗料・自然塗料
南に大きなウッドデッキを配した。これは右に見えるご実家の親御さんとの触れ合いの場。家の中まで入らなくても気軽に触れ合える場。あえて程よい距離感をつくる。 ウッドデッキの前の木は桜の木。以前から庭にあったものを移植した。桜の花が満開になり家に居ながらにしてのお花見を期待したい。
左の屋根は外廊下でコンクリート打ち放しの車庫に続く。まるで学校のよう。雨に濡れることなく車から家に入ることができる。
この時期まるで草原そのもの。なんとも気もちいい。緑の上を風が住まいに流れ込んでくる。
東面の屋根下部の三角形は透明のガラス窓。いつでも青空が見られ朝日も気もちよく入ってくる。
玄関ホール 玄関の扉を開けると正面にシースルーの階段がある。ただ玄関からいきなり2階には行けない。玄関ホールと階段室の間に透明のアクリルガラスで仕切られているからだ。一度手前の家族室に入るドアを開け家族室に入ってから奥のドアを開け階段室へと行き2階へと行く。どんな状況の時でも必ず家族の顔を見てから…
この透明のアクリルは実は回転扉になっている。ただストッパーがついていて通常は全開はできないようになっている。通常は少し開いており風が気持ちよく流れるようにしている。また何といってもこの壁が奥が見えまた更に外の景色まで見せることで視線の抜けを創り同時に開放感を創る。外の景色はあの草原だ…
敷地を初めて見た時から、この草原をイメージし南の玄関の扉を開けたら、いきなり北の大草原が目に入るようにしたかった。
うまくいった・・・
玄関 昼間は上からと北からの自然光で明るく健康的に。
玄関 夜は間接照明で柔らかな光の演出。普段は全部灯していることはない。その時々の状況でどの光を灯すかでこの空間の趣がガラッと変わる。
家族室 玄関ホールのドアを開けるとそこはゆったりとした空間の広がる家族室。
上部は吹抜け。吹抜けに面してキッチンの正面2階にキッズコーナーを配している。奥様とお子様がいつも見える位置にした。
家族室は出来るだけいろいろなコーナーを築け、家族の誰もが自分のその時その時に一番居心地の良い場所で過ごす。でもみんな一緒。という空間を創っている。
光は間接照明をメインにやはりその時々に合わせて必要な所に必要なあかりを灯すように配している。壁を照らすことで広がりを創り、また部分部分であかりを灯すことで空間にいろいろな表情と雰囲気を創る。 もしかしたら多くの照明があってもったいないと思う人がいるかもしれませんね。ただ必要な処に必要な明かりを点すことが出来ることで電気の消費量も逆に抑えることが出来省エネになります。
自分の心の状態に合わせて光の調節をし自分で好みの空間を創る・演出できるとしたら。何と心豊かなことではないかと思いませんか?落ち着きたい時にはテーブルのライトのみ点す。元気で過ごしたい時には出来るだけ明るく。
家族室/吹抜 中央の天井から床に降りている白いパイプは太陽の熱で屋根が暖まりその熱を床下に送っているパイプ。存在感がある。
家族室・ダイニング 奥様へのプレゼント。ダイニングはいつもホームカフェをイメージしてつくる。照明はテーブルから60cmの高さに低く抑える。またこの照明器具は明るさを自分で調節できる。
家族室・リビング 家族室に面して手前はスタディーコーナーそして和室を配置している。和室との境には障子を設置しているが、すべて開口を開け放しにしたいため壁面に収納させる。 2階の吹抜けの手すりも強化ガラスとし出来るだけ視線を妨げない工夫をしている。
家族室 南面には大きな窓を上下に設置している。出来るだけ光を奥に届けるためだ。但し軒は出来るだけ深く取っている。夏場の無駄な直射日光を遮断するためだ。
家族室・ダイニング ダイニング上部の壁の窓は子供室の室内窓。子供室に居ながらも1階の家族室につながっている。下の窓を半回転させると1階の暖かな空気を採り込めるようにした。
食卓とシステムキッチンの間には収納を備えた。その扉の一部にマガジンラックを設置し、普段ゴロゴロしがちな新聞や郵便物を簡単に収納する。
家族室・ダイニング ダイニングに面してスタディーコーナーがある。お子様が小さなうちは宿題や勉強もやはりお母さんのそば。自分の部屋ではしない。お母さんと最もコミュニケーション取りやすいところに配した。
吹抜けに面した手すりは視線の邪魔にならないように薄いスチールのフラットバーと透明の強化ガラスの組み合わせでつくる。 空間的な広がりを創る。
透き通り感を出すため、手すりをスチールのフラットバーを加工しその中にアクリル板を仕込む。
和室 高さの低い窓を畳面に取付け、目線を低く抑える。より落ち着いた空間を演出する。また床面に設置する窓からは風が入りやすい。稲穂の上を通る涼しい風が気もちよく入ってくる仕掛け。
部屋から広がっている田植えの前の水田の風景を見ると、まるで水の上に浮いているような気にさえなる。
借景を出来るだけ生かすことは楽しさと安らぎを与えてくれる。