1-4 健康と快適と省エネの備え

1)健康の備え

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私が「住まいの設計の大切さ」に気づかされたのがシックハウス問題でした。お恥ずかしい話ですが、それまでは住宅設計はもっと単純なものだと思っていたのです。

「自分がつくる家に住んで病気になる人をつくる可能性がある」
という恐怖心を覚えたと同時に、「しっかりと考えた家をつくることで、そこに住む人の健康を守ることができる」という、設計者としての社会的な役割の重要性を自覚したのです。


シックハウスを避ける基本は「素材を吟味する」ということに尽きます。

換気も重要ですが、
それよりもまずは“元を断つ”という意味での素材選び、建材選びが重要です。

とくに「室内に使う材料」については、慎重な姿勢が必要です。
化学物質に関する基本的な知識を持ちながら、室内に使う材料についての情報を集め、「より安全性が高いと考えられるもの」を選ぶようにします。
「より安全性が高いもの」を大雑把に言えば自然素材になります。ただ、「自然素材がすべて安全」というのは科学的に間違った認識なので、自然素材を中心に選びながらも、その内容をしっかりと確認していきます。私の理解を超えた事柄が出てくれば、素直に「もっとわかっている専門家」にアドバイスを仰ぎます。

ここで「専門家」という話が出てきたので少しだけそのことについて述べます。 家づくりというのは本当にたくさんの事柄、要素を考えていかないといけません。その中には非常に専門性の高い内容も含まれています。とくに科学的、理科的なことについては、私の力量では判断がつかないものが出てきます。そんなときに頼れるのが「専門家」と呼ばれる人になります。

有難いことに、私はその専門家に恵まれています。相談をもちかければ、すぐに「最良の答え」「妥当な答え」を出してくれる人たちが私の回りにいてくれます。だから私は何かわからないことが出てくれば、素直にそんな人にアドバイスを求めます。そこで私が心がけているのは、「わかっているという錯覚をしない」「変なプライドを持たない」ということです。

「健康」の話に戻りましょう。 住まいに関連した「健康」は化学物質のことだけではありません。カビやダニのことはアレルギーに深く関わってきますし、家の中の温度差は「ヒートショック」という問題を引き起こします。このあたりは「温熱環境」というテーマと深い関わりがあり、次の「快適」のところで述べることにします。

2)快適の備え:温熱環境

住まいに関する「快適」には、非常に様々な視点、とらえ方があります。
おそらくそれは、五感で感じる「快適感/不快感の要素」を考えるのがわかりやすいでしょう。ただし、味覚は関係がないので除きます。


  1. 目 …色、空間構成、素材感、光など
  2. 耳 …外部からの音、家の内部にある音
  3. 鼻 …調理の臭い、建材の臭い、カビの臭い、外部からの臭い
  4. 皮膚…手触り、足触り、温度(熱)、湿度(湿気)


住まいを設計するという作業は、この4つの感覚について「いかに快適に向かうか?」を考えていくという見方もできます。

実際、私にもそういうイメージが常にあります。


さて、このように実に幅の広い「快適」ですが、ここで述べていくのは「皮膚」で感じる「温度(熱)」と「湿度(湿気)」についての快適性です。

これを専門的には「温熱的快適性」と呼んだりします。

この言葉は、最近では少しずつ見かけるようになった「温熱環境」という言葉と重なります。


温熱環境とは、 温度(熱)と湿度(湿気)についての環境を示すものです。

難しい言葉はさておき、私が備えるのは「冬、暖かい住まい」「夏、涼しい住まい」です。

これも当たり前な話ですが、「どこまでしっかり実現させるか?」というところが重要です。


まずは「冬、暖かい住まい」について述べましょう。 ここで何より重要になるのが「断熱」です。

もうほとんどこれで話はオシマイと言ってもいいくらいです。

断熱性を高めることによって次のような状況が生まれ、「暖かい」となるわけです。


  1. 暖房している部屋の空気が均一に暖かくなる
  2. 床、壁、天井の表面温度が高くなるので、体感温度が増す
  3. 暖房している部屋と暖房していない部屋の温度差が小さくなる
  4. 昼間に得た日射熱が逃げにくく、夕方以降の温度低下が小さくなる
  5. 暖房で得た熱が逃げにくく、朝方でも室温が大きく下がらない
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一応言っておけば、トス設計がつくる家では平成11年に「次世代省エネルギー基準」が定められましたが、以来その断熱性能以上の性能を必ず備えています。

このレベルは今では「当たり前」で、とくに自慢するようなものではありませんが…。現在は更に高い断熱性能を有し世界基準のパッシブハウスの基準を目指しつつあります。こうした基準や断熱材の種類や厚みなども大事ですが、ほんとに大切なのは「実際にどんな温度になっているかを確かめること」と「住まい手が満足しているかをきちんと確認すること」だとも思っています。

そしてうれしいことに、今までのほとんどの住まい手が「暖かくて気持ちいい」と言ってくれます。
断熱性を高めて「暖かさ」をつくると、それは同時に「暖房エネルギーを少なくする家の備え」ができたことになります。私は省エネルギーについても強い関心があり、断熱性を高める大きな意味のひとつとして「省エネ」をとらえています。

ただ、断熱性を高めることには、少しだけ「注意点」があります。それは「ヘタをすれば夏が暑くなる」「内部結露のリスクが高まる」ということです。 このあたりについては次の「夏、涼しい住まい」と、「長寿命のための備え」のところで述べることにします。
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もうひとつ、
私が取り組んでいこうと思っているのが「パッシブソーラー」という技術です。

パッシブソーラーというのは、窓から日射熱を取り込み、その熱を床などに蓄えておいて夕方以降の暖房に使うという技術です。設計のあり方によって、自然のエネルギーをうまく暖房に使えることがとてもおもしろく (もちろん省エネになります)、すごく素敵な方法なので積極的に取り組んでいこうと考えているわけです。

では、「夏、涼しい住まい」に移りましょう。
ここでは「日射を遮る(日射遮蔽)」と「風を通す」がポイントになります。

「風を通す」についてはすでに「光と風の備え」で述べたので、そこを読んでください。


日射遮蔽は「夏、涼しい住まい」をつくるときのもっとも大切な備えになります。

「夏、涼しい」と聞くと「風通し」と思う人が多いでしょうが、実は日 射遮蔽のほうがより基本的です。

夏の暑さの「元」は太陽の日射熱なので、いかにそれを家の中に入れないかを考えないといけないわけです。
その日射熱のほとんどは「窓」から入ってきます(「屋根を通って」というのもソコソコありますが)。

だから、そこを中心に日射遮蔽対策を考えていくことになります。具体的には、次の工夫が効果的です。


  1. 窓のすぐ外に日射遮蔽部材を設ける(軒、庇、すだれ、シャッターなど)
  2. 植物をうまく利用する(落葉広葉樹を植える、緑のカーテンを育てるなど)

とくに設計的には「軒、庇、シャッター、庭のつくり方」などがポイントになるので、日射遮蔽のことをしっかり考えながら、こうした備えを設けます。また、日射遮蔽は住まい方がとても重要なので、そのアドバイスをすることも私の中では“設計上の大切な備え”という位置づけにしています。



≪1-5 長寿命の為の備え