「日当たりのいい家、風通しのいい家」は誰もが望むものでしょう。

暗い家は心も暗くしてしまいます。風通しが悪く空気が淀んだ家では、不健康になってしまう感じがします。

実際、風通しはカビの発生を抑える働きがあることがわかっています。人はこういうことを経験的に身体で理解しているのかもしれません。


光を入れること。風を通すこと。


これらが住まいに必須な事柄であることは言うまでもありませんが、問題はそのレベルというか内容です。

窓をたくさん取って、大きくすればいいだけの話ではないのです。

hikaritokazenosonae
南側の部屋に光を入れるのは簡単です。
太陽はほとんど南側にいるからです。
東側は午前中しか直射日光は入りませんし、西側は午後だけです。
そして北側はどの時間にも直射日光を入れることはできません。

ここで、北側にある部屋にいかに光を入れるかというのが課題であることがわかります。間取りを工夫して、北側に暗くてもいい部屋を集めるという方法もありますし、実際にそれを基本に間取りを考えていくことになるのですが、たとえば南北に長い敷地であればうまく行きません。

そこで必要になるのが
「光を入れるための様々な設計手法の知恵」です。
具体的には「天窓」「側頂窓」「吹き抜けの利用」「反射光の利用」といった手法になります。
こうして挙げると何だか簡単そうに思えるかもしれませんが、それぞれになかなか奥の深い話になります。

というのも、窓はただ光を入れる役割だけを果たしているわけではなく、風の出入り口、外の景色が見えるところ(逆に、外から家の中が見えるところにもなりま す)でもあり、さらには「夏には日差しを入れたくないところ」になったり、「冬には熱がたくさん逃げていくところ」にもなります。吹き抜けに関しても、きちんと熱の性質を理解して設計しないと、そこから冷気が下りてきてしまいます。
こうした「全体のこと」をしっかり頭に入れながら、うまく「光を入れる」という目標を達成しなければならないわけです。
hikaritokazenosonae2


風通しは、同じ階の両側に窓を設けるのが基本であることは間違いありません。
でも、風は「上下(1階から2階へ、またその逆もあります)」にも流れますし、
それは実際にかなり重要な流れになります。

また、室内の建具のあり方も大切です(私が室内建具を「引き戸が原則」にしているのは、しっかり風を通 したいという理由もあります)。

幸いなことに、光を入れるための設計手法と風を通すための設計手法はかなり一致するので、先に述べた注意事項を頭に入れながら、光と風のデザインを同時に考えていくことになります。


もちろん、光を入れ、風を通す設計に当たっては、周辺環境の把握が必須条件です。地元でコツコツ住宅の設計を続けていると、「この地域ではこの季節や時間にこの方向から風が吹く」というようなことがわかってきます。

「光のデザイン」は昼間だけの話ではありません。夜の空間をつくる光のデザインについても考えないといけませんし、それもまたとても大切なことです。平日には、「家族の数×家で過ごす時間」の量は昼間よりも夜のほうが多い家庭が一般的ですから。


これはいわゆる「照明計画」と呼ばれる設計作業になります。照明がつくり出す空間というのもなかなか奥が深い、おもしろいテーマです。単純な「明るさ」が必要な場面や場所もありますし、落ち着いた空間をつくるための手法もあります。


とくに私が大切にしているのは「心がやすらぐ空間をつくるための照明計画」です。ここで基本になるのは「間接照明」と呼ばれるものになります。光源の種類とそれを反射させる場所の素材や色を考え、その広がりをイメージしながら、照明計画を行っていきます。



≪1-4 健康と快適と省エネの備え